当塾の活動に関心をお持ちになり、このページを開いてくださいましたこと、誠に有り難うございます。
お父さん、お母さん。まず、ここで、想像してみてください。お子さんが学校生活を終え、一人で社会という海原へ旅立つときのこと、そして、社会の荒波の中で揉まれ洗われて、大きくなっていく過程を ― 。どのようにお感じになるでしょうか。
さまざまな苦難に直面するかもしれない、その様子を想像して、「強くたくましく生き抜いてほしい 」― 心の底からそう願うのではないでしょうか。
では、今、お子さんのためにできることは、何でしょうか?
私たちはこう考えています。「知恵」を子供たちに残してやるべきだと。
高野塾では設立当初から、指導の際には教えすぎないように心がけております。つまり、答えを出すことより、「自分で考える」その過程を重視した指導を心がけているのです。
できない生徒の多くが自ら考えようとせず、すぐ答えを得ようとし、質問するのではなく答えを聞いてくるものです。最近ではこの傾向が、中程度の学力を有する生徒にまで拡大しているように思います。
しかし、自分で解こうとする意志がなければ学力の向上は望めません。まずこのことをご父母の皆さんに理解していただきたいのです。
ここで、皆さんがダイエットのため腹筋を鍛えようと決心したとします。はじめから何回もできません。一回とか二回とかで断念してしまう。まっいいか、と。多くの方がこの道をたどるわけです。
しかし、もう少し強固な意志があれば、トレーニングジムに出かけて行って、誰かに手助けしてもらおうとするでしょう。そこでトレーナーは、手を貸さずに、膝を曲げてやることを勧めるわけです。
「さっ、自分でやってみてくだい。」
こうするとちょっと負荷が小さくなるから、何回かできるようになります。この小さな満足をバネに継続しているうちに、お腹が少し硬くなった気がしてくるのです。自分だけちょっと嬉しい気分になり、この満足がさらに次へのバネになります。そうすると、今度は自らもう少し大きめの負荷を望むようになります。そして、数ヶ月もすると周囲の人の目にも明らかな変化が見られるようになり、自分に自信が持てるようになるのです。
もしトレーナーが、最初から腹筋に緊張が感じられないくらいに助力してしまい、
「いいです。その調子。」
なんて声に踊らされていたら、一向に効果が見られなかったはずです。自分で鍛えていることにはならないからです。
学力をつけるにも同様なことがいえると思うのです。自分でやろうとしない限り向上は望めません。「教え過ぎ」は効果がないばかりか、結果的には自信を失わせてしまうのです。しかし、だからといってまったく教えなければ、「やる気」そのものもなくなってしまいます。チョットずつヒントを与えながら、自分で解けたという実感が持てる程度に教えることが大切です。
小さな負荷から大きな負荷へと移行していくためには、生徒も先生も辛抱強く継続する、忍耐と努力が必要です。そして、ご父母の皆さんにも、途中で弱音を吐くかもしれないお子さんに対して、厳しさと優しさが要求されるのです。
今年、高野塾は開校40年目を迎えます。ここで学び、巣立っていった生徒たちが大人になって、今度は塾の「先生」として戻ってきています。また、卒業生の子供たちが、お父さん、お母さんの後に続けとばかりに、何人も入塾しています。過ぎた歳月を感じますが、その間、私たちは教育の基本的なスタンスをずっと変えず、この町のひとつの教室だけで、子供たちの指導に当たってきました。
これからも、「自ら考える力」「学ぶ力」こそ、子供たちが未来を生きていく上で最も重要な力のひとつであるとの考えは変わりません。生き抜いていくために「知力(頭)」「精神力(心)」「体力(身体)」の三つが必要であるとしたら、私たちは「知力」の部分で子供たちの大きな支えであり続けます。「塾ならば当たり前」と言われるかもしれませんが、世の大人たちの教育に対する態度が曖昧にボケてきてしまっている今だからこそ、改めて「子供たちの能力を伸ばす」という学習塾本来の目的を大切にしたいのです。
高野塾は決して「優しい」塾ではありません。補習もあります、宿題も出します。授業中の真剣さが足りない場合は叱ることもあります。最近は多くの塾が「学びやすさ」や「快適さ」をうたい文句にしているようですが、学習とは本来、そのように面白おかしいものではないはずです。まずは、苦労してでも自分の手を動かすこと、自分の頭でものを考えること。体を鍛えるのも頭を鍛えるのも同じことです。
確かに高野塾にも「無制限補習」や「定期テスト対策」はあります。しかし、それは生徒自身に脳みそを使って考えさせるためのもので、決してラクをさせるためのものではありません。生徒にとって「出来ない」「わからない」は、学ぶため、伸びるためのまたとないチャンス。ですから、私たちは「出来ないまま」「わからないまま」家に帰したりしません。小さな負荷から大きな負荷へと、確実に学習効果があがるように注意を払いながら指導を行い、生徒が「自力で解決」できるまでトコトンつきあうのです。
その姿勢が理解されず、「高野塾は厳しい」と敬遠されることもあります。しかし、子供たちにほんとうに必要なのは、ラクなだけで何の身にもならない表面的な「優しさ」ではなく、妥協を許さず自分に本気で向き合ってくれる「真剣さ」ではないでしょうか。
子供たちに「真剣に」向き合うことによって「自ら考える力」を養い、生きるための「知恵」を育てる。それこそがほんとうの「優しさ」であると、私たちは考えます。生徒がゴールを目指して走り続ける「マラソンランナー」なら、私たちはその横で走り続ける「伴走者」でありたい。そんな思いで30年余、この土地の子供たちに接してきたのです。
以上のことを是非ともご理解いただき、そのうえで大切なお子さんをお預けいただきたいのです。高野塾は、決して皆さんのご期待を裏切りません。もしお子さんが弱音を吐いたら、その時には、ご父母の皆さんが、優しく、勉強の厳しさと乗り越えたときの喜びを話してあげてください。
最後までお読みくださいまして、有り難うございました。
高野塾塾長 高 野 健